Research

美しく盛られた食事がより美味しく感じられたり、懐かしい香りで記憶がよみがえったり……。人は、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)で得た情報を感情や行動につなげています。中でも嗅覚で感じ取る「香り」は、脳を介して意識や本能にダイレクトに働きかけるとわれています。

香りの役割

香りは生活の中で様々な役割を担っています。気分を落ち着かせたり気持ちを奮い立たせたりといった心理効果、消臭・防臭、芳香といった身だしなみや空間を整える効果などがその代表です。

フレッシュな香りをまとうとフレッシュな印象に見られるといったように、香りは人の印象を左右することが知られています。嗅覚情報は、無意識の中で脳内処理されることにより、人間関係に大きな影響を及ぼしているのです。私たちは、そのような香りによる印象の変化を正確にとらえる研究を進めています。

印象の測り方

香りによる人の印象の変化をとらえるためには、人と香りを“同じものさしで測る”必要があります。そこでまず、20-50代男女248名から人物の印象を表す言葉1008語を収集し、KJ法※によってカテゴリーの異なる30語を設定しました。
※KJ法:付箋紙などに全ての情報(言語)を記述し、それらをグループごとにまとめて情報を整理していく手法

人物の印象を表す30語

設定した30語を用いて、20-50代男女1212名に印象特性を考慮し選定した俳優やスポーツ選手など男女各5名の著名人の印象を評価してもらいました。これらの評価値に対して統計解析を行った結果、人物の印象は能力や知性などを表す「才気」、見た目を表す「外見」、かわいらしさなどを表す「温かさ」の3因子で表せることがわかりました。

さらに同じ言葉を用いて、30-40代男女108名に香り(男性向け4種)の印象を実際に嗅ぎながら評価してもらいました。すると香りの印象は、人物の印象を示す因子構造と似た気品などを表す「エレガント」、爽やかさなどを表す「フレッシュ」、かわいらしさなどを表す「ラブリー」の3因子で表せることがわかりました。

以上の結果から、人と香りの印象は同じ言葉や類似した3つの因子で評価できることがわかりました。人と香りの印象を同じ言葉で表すことで、似た印象を与える人物と香りを抽出でき、演出したい印象に向けてより正確な香りを創り出し提供することが可能になります。

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