Research

必要な成分を必要な場所へ送り届けるために、目的や成分に合わせた様々なナノカプセル技術が開発されてきました。その中から代表的なものをいくつかご紹介しましょう。

ヒト型セラミド内包ナノカプセル

肌のうるおいを保つのに重要な「ヒト型セラミド」をナノカプセルに取り込んで配合する技術です。肌の保湿やバリア機能維持に欠かせないヒト型セラミドですが、水や油に溶けにくく結晶化しやすいため配合が難しいという側面も。生体親和性に優れたナノカプセルに高濃度で内包することで、ヒト型セラミドを肌の奥まで送り届けることが可能になります。

ヒト型セラミド内包ナノカプセルの構造
(左:電子顕微鏡画像、右:トモグラフ(断層映像)による立体画像)

3次元培養皮膚と呼ばれる人工皮膚を用いたナノカプセルの浸透試験では、水に溶けない赤い染色試薬(ナイルレッド)を内包したナノカプセルが人工皮膚の深部まで到達していることを確認。ナノカプセルを用いていない油剤よりも高い浸透性を示すことが確認できました。

植物由来のセラミドナノカプセル

成分を届けるだけでなくカプセル自体のスキンケア効果も注目されているのが、米や大豆から得られるセラミド類似成分「スフィンゴ糖脂質」を用いたナノカプセル技術。スフィンゴ糖脂質はセラミドに糖が結合した糖セラミドの一種で、肌のバリア機能を改善する効果などが知られています。植物由来のスフィンゴ糖脂質で作られたナノカプセルに期待できるのが、肌の水分保持能機能やバリア機能強化へ働きかけること。さらにエイジングケア成分として有名なレチノール(ビタミンA)誘導体などを内包して配合するなど、実用化も進んでいます。

セラミドナノカプセルの構造
(左:電子顕微鏡画像 右:CGイメージ画像)

赤い染色試薬(DiI)を内包した植物由来のセラミドナノカプセルが、ナノカプセルを用いていない場合と比べ、より高い浸透性を示すことが確認されています。

水に溶けやすい成分を届ける2重膜ナノカプセル

遺伝子を内包して細胞内に送る遺伝子送達キャリアとしても有用とされているのが、水に溶けてもイオン化しない界面活性剤を用いて作る2重膜のナノカプセル。優れた浸透促進効果と安定性の高さから、医薬品だけではなく化粧品や食品など幅広い分野への応用も試みられています。

2重膜ナノカプセルの構造
(左:電子顕微鏡画像 右:CGイメージ画像)

水に溶けやすい緑色の染色試薬(カルセイン)を内包したナノカプセルが、ナノカプセルを用いていない場合と比べ、より高い浸透性を示すことが確認されています。

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