大正製薬 製剤第1・第3研究室 室長

長濵 徹

Profile

品質の裏にある地道な積み重ね

所属する部門と室長の役割について教えてください。

長濵

ドリンク剤の研究開発を行う製剤第1研究室、化粧品、ヘアケア製品、水虫薬や目薬などOTC医薬品の研究開発を行う製剤第3研究室の室長を兼務しています。長い研究職での経験を活かし、また新たな学びも得ながら、2つの研究室合わせて50人弱の研究員の業務を統括する立場にいます。
入社以来約30年間研究室に在籍し、化粧品の研究開発にはスタートから携わってきました。手探りで試行錯誤していた当時からこれまでを振り返ると非常に感慨深いです。

これまで「先端美容研究所サイト」では、3度にわたり研究員へのインタビューを行なってきましたが、聞いていかがでしたか?

長濵

何が必要かを考え自分の言葉で提案する姿を見て、とても頼もしく思いました。研究室でも想いが行動として見える場面が増えており、インタビューからはそんな一人ひとりの自信が伝わってきました。
大正製薬では生活者の健康と美を実現するという目標を掲げ、これまで中心を担ってきた医薬品事業に加えて化粧品事業のさらなる躍進を図るため、化粧品研究開発の経験者を積極的に採用しています。彼らの存在も大きく、研究室全体の成長を肌で感じています。

大きな転換期を迎えている研究室ですが、一方でずっと変わらない良さもあります。大正製薬の行動基準の1つ「正直・勤勉・熱心」は、社風を非常によく表している言葉。同じテーマを根気強く探究し続けるような研究職では、このワードを体現するような人材がとくに多いかもしれません。そういった人間性は、製品の品質へも結びついているはずです。
化粧品市場ではイメージや世界観が重要視にされる傾向にあり、弊社もその点は理解し大切にしています。しかし毎日使うものだからこそ、品質にこそ徹底してこだわるべき。医薬品に倣った厳しい基準に基づいて安全性の評価を行うなど地道な努力は、表だって見えにくい部分。どの製品も研究員たちが一つひとつ実直に積み上げてきた成果であるということは、お客さまにもぜひ知っていただきたいですね。

女性向け栄養ドリンクの開発から肌細胞研究へ

美容分野の研究はいつ頃からはじまったのでしょうか?

長濵

私も携わっていたのですが、20数年前にスタートした女性向け栄養ドリンクの開発が最初のきっかけでした。リポビタンDをはじめそれまで販売していた栄養ドリンクは、いずれも男性をターゲットにしたもの。女性の社会進出が進む中、女性向け製品の開発に着手しました。作りたかったのは女性に不足しがちな成分、とくに鉄分を手軽に補える栄養ドリンク。課題だった鉄独特の風味をマスキングする技術を発見したことで発売に至ったのがアルフェです。
当初は疲れを感じている女性をターゲットに研究を進めていましたが、疲れていると肌の調子も悪くなるなど体と美容は連動しているということに着目するようになり、研究テーマが少しずつ美容分野へと広がっていきました。
その後、栄養ドリンクにも配合されるタウリンが皮膚にも存在することがわかり、肌細胞研究が本格化。さらに以前から進めていたミトコンドリア研究がミトコンドリア内に存在する酵素マイトリガーゼの研究へと発展し、いま最も力を入れている肌の老化(エイジング)のメカニズム追究、エイジングケア製品の研究開発へとつながります。

医薬品の研究開発と化粧品の研究開発の違いとは?

長濵

医薬品は治すという明確な目的があるため、処方設計の考え方は非常にシンプル。一方で化粧品は、肌効果だけでなく使い勝手や使い心地など考慮するべきことが多く複雑です。また、医薬品に使用できる素材は約1000種であるのに対して化粧品は数万種と一気に増えるため、どの素材をどう配合したらよいか特徴や扱い方などを一から学ぶ必要もあります。
美容分野の研究開発がスタートした当時は、叶える目的や使える素材の多様さに悩み試行錯誤する姿が見られましたが、近頃の研究員たちの表情からはチャレンジを楽しんでいる様子も見受けられるようになりました。

新たな領域の研究開発へシフトするにあたって大きかったのが、共同研究を進める大学の先生方や各メーカーさんをはじめ外部の方々から得る学び。医薬品と化粧品ではご協力いただく研究機関や業者さんも異なるため、ディスカッションを重ねる中で新しい関係を築いていきました。
また先ほどお話しに出た中途入社の面々も、これまでの経験を存分に活かしながら、新しい風をおこしてくれる存在。研究開発の体制は十分に整い、経験値もある程度上がってきている今、これまでにないものを取り入れて視野をどんどん広げていく段階にあると思っています。

エイジングを本質から解き明かす

エイジングケアは今後どうなっていくと思いますか?

長濵

エイジングケアという言葉が浸透してかなりの年月が経ちますが、実は解明されていないことだらけ。便秘で肌状態が悪い、寝不足でメイクのりが悪い、ということからも肌だけの問題ではないということを実感されている方は多いかと思います。しかしそれがどういったメカニズムで起こっているのか、どうしたら若々しさを維持できるのか、根本的なことはほとんどわかっていません。
裏を返せば、研究の余地が充分あるということ。今後はエイジングを体全体の現象としてとらえ、インナーとアウター両面でケアすることがスタンダードになるのではないかと予測しています。そして大正製薬は幸いどちらのリソースも持ち得ている。医薬品研究で培ってきた経験を礎にメカニズムの本質に迫ることができれば、エイジングケアのトップランナーになることも可能だと思っています。

大正製薬の美容分野研究で大切にしていることは何ですか?

長濵

私が研究員としての経歴をスタートした頃は予想もしていなかったことが今では常識になっていて、研究は日々進歩しています。いつまでも若々しく美しくありたいという願望がより高いレベルで叶う日も近いでしょう。そういった中、エビデンスに基づいた本質的な製品を市場にお届けするということは、ブレることなく大切にしていきたい。既に多くの化粧品ブランドがひしめく中、大正製薬が真っ向から参入する意義はそこにあると思っています。
ブランドとは、お客さまに育てていただくもの。使い続けていただき、肌で感じた評価が結果としてその製品の存在感を高めてくれるのではないでしょうか。見て触れて日ごとに変化を実感できる確かな製品をお届けするために、大正製薬が持つ研究力を活かし、エイジングの解明を続けていきます。

研究者インタビュートップ

大正製薬 製剤第1・第3研究室 室長

長濵 徹

約30年にわたり一貫して研究職に従事し、外用剤OTC医薬品、ドリンク剤、点眼薬等多くの製品を開発。現在はドリンク剤、ヘアケア、スキンケア、サンケア、点眼薬の研究開発を統括する。
美容分野研究にスタート当初から携わり、その沿革を最もよく知るひとり。

一から築き上げた化粧品事業で、トップランナーを目指す

印象に残っているできごとは?

大正製薬が化粧品開発に踏み切ったことは、研究員人生でも大きな出来事でした。それまでも美容分野の研究は進めていたのですが、製品としてのアウトプットがない状態。今後どうなっていくのかと思っていた時、社として本格的に化粧品事業に参入することが決定し、新設された化粧品グループの配属になりました。
誰もが未経験でのスタートでしたので、化粧品基準などの薬制法規などを一から勉強し、関連する学会や講習会などに参加して業界についての知識も得るように努めました。開発ノウハウに関しては中途採用で優秀な経験者を迎え入れ、彼らに学びながら体得し、現在に至ります。困難を感じることも多かったのですが、徐々に化粧品開発の面白さもわかってきました。

化粧品開発の面白さとは?

医薬品では難しかった様々な試みにトライできる点です。成分を微細なカプセルに閉じ込めて肌のすみずみまで届けるデリバリー技術や美容成分を針状に固めたマイクロニードルなどのユニークな剤型をはじめ、取り入れてみたいことが次から次へと出てきます。例えるなら、医薬品は決められた食材で作る病院食のようなもので、化粧品は世界各地から選りすぐった食材で作るグルメ料理のようなもの。疾患を抱える方にとって体調に合わせた病院食はなくてはならないものですが、健康な方にとっておいしい料理というのはときに心の栄養にもなります。そして作る側にとっても、あらゆる可能性の中から素材を探求し、心まで満たせるような料理、つまり化粧品に仕上げるその過程も楽しいものです。

研究にかける想いとは?

健康寿命への関心が高まり、長く健康で長く美しくいたいという願望をさらに多くの方が抱くことが予測されます。時代に合わせて様々なニーズにお応えしてきた大正製薬の役割も、健康と美容の両面から生活者の豊かな暮らしを実現するという方向へシフトしていくでしょう。そのような中、製品をゼロから作り上げる研究室は化粧品事業の肝となる存在。本質を突き詰める研究姿勢はどこにも負けない我々の強みであり、いつまでも若々しく美しくありたいという願望を叶えることができる製品が生まれる未来も近いかもしれません。