大正製薬 セルフメディケーション臨床開発部

下益田 正嗣

Profile

大正製薬 セルフメディケーション臨床開発部

永井 恒

Profile

自信を持って世の中へ送り出すために

セルフメディケーション臨床開発部の役割について教えてください。

下益田

製剤設計部署が開発した製剤を製品として世の中に出すために、安全性や有効性を実際にヒトで確かめる臨床試験の推進が主な役割です。
製品化するにあたりヒトに対してどのような試験が必要かを検討し、試験計画を作成して医療機関や専門機関で臨床試験を実施いただきます。そこで得られたデータを解析・検証し、製品として自信を持って世に出せる否か、また、どんな特長を持った製品としてお届けするかを見極めます。

永井

医薬品や医薬部外品(薬用化粧品)の場合、必要に応じて様々な試験データをもとに申請書類を作成し、国からの承認が得られると製品として世の中へお届けすることができます。医薬部外品でない化粧品は届け出を行うのみで申請の必要がなく、臨床試験で得られたデータは製品コンセプトの裏付けや安全性の確認に用いられます。
大正製薬は薬用化粧品、化粧品いずれの場合も必ずヒトで安全性を確認するため多少時間を要しますが、それでも臨床試験に費やす期間は、多くの場合は半年から1年未満。5年10年かかることもある医薬品に比べると短く、化粧品と医薬品とでは製品化までのスピード感がまったく異なります。

基盤研究や製剤研究での評価と臨床試験の違いは?

下益田

基礎研究や製剤研究でも安全性や有効性の評価を行っていますが、ヒトに使用して安全なのか? ヒトでも効果実感があるのか? などは仮説のようなものです。その仮説を検証するために、被験者さんにご使用いただきヒトにおける反応を確かめるのが臨床試験になります。
セルフメディケーション臨床開発部へ引き渡されるのは、いくつもの自社基準をクリアしてやっとのことでヒト試験を実施できる段階へ進んできた製剤。基礎研究そして製剤研究へとバトンタッチされてきた地道な研究の成果でもあるので、最適な形で製品化へつなげたいといつも思います。

製品の価値をどのようにお客さまへ伝えるか

化粧品の臨床試験はどのように進めるのでしょうか?

下益田

最近では、新たなメカニズムに基づいたスキンケア製剤の臨床試験を担当しました。
大正製薬では通常、化粧品の安全性確認を目的として、24時間連続で皮膚に貼付した際の刺激反応を評価する「ヒトパッチテスト」、毎日使用した際の反応を評価する「累積刺激・感作性試験」を行いますが、一部のスキンケア製剤ではこれらに加え、ピリピリ感やヒリヒリ感などの感覚刺激を評価する「スティンギングテスト」といった安全性試験、さらに有用性などを確かめる4週間の実使用試験も行いました。これらは、その製品にどのような特長や他社製品との違いがあり、お客さまにどんな価値を提供できるかということを見出す目的があります。

永井

パッチテストなどの一部の安全性試験は試験済みである旨の表記が可能なものの、その他の試験に関しては実際に使用いただき得られた結果であっても、データの使用には制限をかけて取り扱いには細心の注意を払っています。

化粧品は効能効果や安全性に関する実験や臨床データの例示が認められていないため、お客さまに目にしていただくことが叶いません。歯がゆさを感じることもあるところですが、一方で科学的な裏付けをもって製品の有用性や特長を社内で共有することができればマーケティングやプロモーションを担う部署のモチベーションアップにもつながりますし、非常に意味があること。安全性や製品コンセプトに見合った特長がきちんと可視化されることで、自信を持ってお客さまにお勧めすることができます。

新たな分野への参入にあたり苦労したことは?

下益田

化粧品の臨床試験の実施経験がない頃、「市場で魅力的に映るであろう製品コンセプトを臨床試験で実証して欲しい」とマーケティング担当部署から依頼を受けた際は、どのような試験計画を組むべきか試行錯誤しました。
仮説の設計、競合各社や論文などの情報収集、コンセプトを説明する理論の構築など、これまで行ってきた医薬品の臨床試験と同様の工程ではあるのですが、会社としても未だ美容分野の実績が少なく参考事例が乏しい中でしたので、なかなか最適な答えを導き出せず苦労しました。その一方、チャレンジする中で製剤の新たな特長を見出すこともできるのだという臨床試験の重要性や、もっと何かできることがあるのではという可能性を感じました。

永井

臨床試験で期待する有用性を示す結果が出ず、製品化が危ぶまれたこともありました。医療用医薬品では日常茶飯事ですが、一般化粧品では稀なこと。大正製薬には独自の評価基準があり、それを満たさなかったんですね。
化粧品は申請が必要ない分、どういった試験を行うかはそれぞれの会社の考え方や方針に因る部分が大きい。大正製薬には自信を持って世に出せるものしか販売しないというポリシーがあり、必須ではない試験を含め必ず臨床試験を行っています。

化粧品の臨床開発の魅力は?

永井

自由度が高い点でしょうか。医薬品の多くの臨床試験は承認を得るために実施するものがほとんどで、評価基準もオーソライズされた明確なものが多い。スキンケアは申請が必須でないことも多く、どのような特長をアピールするかにより、臨床試験で評価するポイントや基準も様々です。例えば、この製剤は使いやすさを切り口にできるのではないかと感じたら、それを実証できるような試験を実施したり。何がターゲットニーズにマッチするかという視点で捉えることで、製剤が持つ隠れた魅力を引き出すこともできます。

下益田

実際にご使用いただいた被験者さんからの感想を聞けるのも臨床開発の醍醐味ですね。臨床試験中に製剤を気に入ってもらい、医療機関スタッフさんが被験者さんから「いつ発売するんですか?」と聞かれたり。いい反応をいただけた時はとても嬉しく思います。

キレイの根拠をきちんと示したい

臨床開発部員に必要な技術や視点は?

永井

臨床試験では想定していたデータが出ないこともありますが、そこで終わりにするのではなく、そこから何を見出せるかが重要です。次へつながるヒントを得られるかは担当者次第。細かい情報を見逃さない真面目さや諦めずに考え抜く根気強さは欠かせません。
また、世の中にないような優れた製品を作ることができても、どのような情報と一緒に市場に届けられるかが明暗を分けることが多いというのも実情。とくに化粧品は情報戦の側面もあり、臨床試験で得られたデータから他社製品との差別化のポイントやお客さまの共感を得られるポイントを見出せるかも、製品をより多くの方にお届けできるか否かの鍵を握っています。

下益田

これまでお話してきたように科学的設計はもちろん重要ですが、医薬品でも化粧品でも、大切なのはご使用いただける方の視点(顧客視点)だと思っています。
その上で最も重要なのは、皆さんに安心して使っていただくこと。加えて、現在の市場ニーズや他社製品、自社の強みといったものだけでなく、さらに5年後10年後にどのような状況になっているのか?という長期的視点など、多面的に考えることができるマインドやスキルが、より魅力ある製品を作るためには大事だと考えています。
大正製薬は生活者の暮らしに関わる幅広い製品を送り出してきた実績があり、臨床試験では1人の担当者がジャンルを超えて様々な製品を担当します。そういった中、広く生活者を見つめる視点が自然と養われるという強みはあるのではないでしょうか。

大正製薬の美容分野研究で大切にしていることは何ですか?

永井

美容トレンドも意識する必要はありますが、長くご愛用いただけるブランドであって欲しいと思います。
化粧品であっても医薬品と同様にヒト試験で評価するなど、必須ではないからと省くのではなく、あえて厳しい基準を設けて実践する実直な姿勢は、信頼して使い続けていただける製品の開発へつながるのではないでしょうか。
どれだけ安全で有効か日々データを見ている立場ですので、自信を持って身近な方にもお勧めできます。

下益田

肌や老化のメカニズムを科学的に解明し、それに対するソリューションを世の中に発信していけるような存在でありたいです。そのソリューションの1つが製品であり、すぐに製品化につながらないとしても未来の美容の可能性を広げるかもしれない。医薬品研究の長い歴史と知見を保持する大正製薬なら、それが叶うのではないかと思っています。
化粧品は夢を与えるものだと言われますが、臨床試験という手段を使って、その夢にきちんとした根拠を持たせてお客さまの元へお届けしたいです。そしてゆくゆくは、美容の未来を切り開くような新規効能を持つ製品にも挑戦していけたらと考えています。

研究者インタビュートップ

大正製薬 セルフメディケーション臨床開発部

下益田 正嗣

医薬品の治験、化粧品・食品の評価試験等を行う臨床開発職に従事。AdryS、THE MYTOLの臨床試験に携わる。大学等の研究機関との共同研究にも参画。
趣味はフットサルで、休日に社内メンバーと集まってプレーすることも。

エビデンスに基づいた製品開発を追求し続けたい

共同研究の目的は?

大正製薬は企業や研究機関、大学などとの外部連携にも力を入れており、私自身も大学との共同研究を多く担当しています。研究成果を製品開発へつなげることはもちろん、その分野を深く探究する先生方から得た学びや経験を社内へ持ち帰ることで、各領域での専門性を高め、研究室全体のレベルアップを図る目的もあります。また、論文を学会で発表するなど社外へアウトプットすることは、大正製薬のプレゼンス向上にもつながります。
スキンケアブランドTHE MYTOLも大学教授との共同研究で見出された肌メカニズムに基づいていますし、美容分野においても共同研究の機会は増えてくるのではないでしょうか。

印象に残っている製品は?

初めて担当した製品はやはりとても印象に残っています。入社して最初に臨床試験を担当したのは、風邪薬・パブロンシリーズのリニューアル。担当して約3年後に発売になったのですが、ドラッグストアに並んだ姿を見てとても嬉しかったのは今でも鮮明に覚えています。
美容分野で初めて担当した製品はAdrySで、立ち上げから携わりました。医薬品とは参考にする論文も全く違いますし、最初は本当に手探りという状態。苦労した分、無事製品化された際はとてもホッとしたと同時に大きなやりがいを感じました。

研究開発にかける想いとは?

今はまだ薬の会社として認知されていますが、今後は健康と美容の2本柱で生活者に貢献し、社会的にもそう認知される存在になっていたいと思っています。
そのためには、美容分野においても良い製品を継続して世に送り出していくことが大切。製薬の分野で培った研究資産を活かして肌を科学的に解明し、そのエビデンスに即した製品を出し続けることで、美の大正製薬としての信頼をより確かなものにできるのではないでしょうか。近い将来、あなたの美と健康をサポートしますと約束できるよう、大正製薬の一人として探究を続けたいです。

大正製薬 セルフメディケーション臨床開発部

永井 恒

健康食品の商品開発を担当した後、医薬品の治験、化粧品・食品の評価試験等を行う臨床開発職に従事。スキンケア、サンケア製品の臨床試験に携わる。
朝晩の丁寧なスキンケアが日課という美容男子。

日々の自信につながるようなブランド力のある化粧品を

化粧品の臨床研究の面白さとは?

製品の特徴を引き出すという点において、自由度の高い点が化粧品の面白さではないでしょうか。医薬品の臨床試験は国から効能承認を得るために行っている部分が大きいですが、化粧品の臨床試験はより広い役割を担うことができます。例えば臨床試験の結果によって、使用実感などの目に見えない特徴を掘り起こし、お客さまがその特徴を理解しやすいようにデータで示すこともできます。製剤を製品化するにあたって、プラスアルファの価値を生み出せる可能性があります。
発売までのスピード感も化粧品の特徴。担当製品が世に出るまでの期間が短いため、仕事の成果をコンスタントに実感できるので、常に高いモチベーションで取り組むことができます。

美容分野には昔から興味が?

学生時代から興味がありましたね。とくに整髪料やシャンプーなどヘアケア製品の開発に携わりたいという思いを持って大正製薬に入社しました。30歳を過ぎたあたりから肌が気になりはじめ、洗顔の後、化粧水とジェルで整えるくらいですが基本的なケアをしています。実際に使ってみることでお客さまの気持ちも理解できますし、自社製品を家で使っている男性社員も多いですね。
ステップを踏んできちんとケアすると肌も変わりますし、見た目に自信が持てるとその自信が他のことにも波及していく。そんな化粧品が持つパワーを実感しています。

製品開発にかける想いとは?

安全性や有効性に関しては、臨床試験の結果からも本当に良い製品を出しているという自負はあります。そこに今後プラスしていきたいのは、気持ちが上がるようなブランド力。市場での製品イメージまで見据えて試験計画を立てるなど、使っていただいた方が誰かに話したくなるような魅力を持った化粧品ブランドを生み出していきたいです。